enPiTとは?

文部科学省「成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成(enPiT)」は,高度IT人材の育成を目指した産学協働の実践教育ネットワークです.その中で,enpit AiBiC は,ビッグデータ処理技術,人工知能技術,クラウド技術などを用いて,新しいビジネスや価値を創出するといった社会の具体的な課題を解決できる人材の育成をミッションとしています.


九州工業大学はenPiT AiBiC九州の中心となる実施大学です.enPiT AiBiC九州では,九州工業大学 情報工学部 知能情報工学科の学生だけでなく,九州工業大学の他学科の学生や他大学からの受講生を広く募集しています.平成30年度には情報工学部電子情報工学科と機械情報工学科の学生が演習に参加しています.平成31年/令和元年度は九州産業大学から3名の学生を受け入れました.令和2年度は物理情報工学科の学生が参加しています(コロナ禍により,対面と遠隔のハイブリッド形式で演習が行われました).興味のある方は気軽にお問い合わせください.

九工大のenPiT / Kyutech ABCの特色

ビッグデータ処理技術,人工知能技術,クラウド技術などを用いて,新しいビジネスや価値を創出するといった社会の具体的な課題を解決できる人材の育成をするという目標を踏まえて,九工大のenPiTでは特に短期集中型PBL演習において以下の2点に注力しています.

特色1:AIに関する基礎知識の獲得

膨大なデータや機械学習の台頭により,AIに関する知識や演習の必要性が日に日に増しています.PBL演習では,機械学習の分野でよく使われる言語であるPythonをゼロから学習します.また,九工大のenPiTではテキストデータを主に扱うため,自然言語処理の基礎についても学びます.自然言語処理の分野で使われる技術を通して機械学習の基礎を学び,scikit-learnなどPythonの機械学習ライブラリやツールの使い方もサンプルプログラムを基に学びます.


特色2:実データを対象とした演習

既存のサンプルプログラムでそれに付随したサンプルデータを扱うことは,比較的容易にできます.しかしながら,実世界では膨大な量のデータを扱うこともままにあります.また,社会に出て実際に何らかのシステムを構築する際に一人ですべてを作業することはあまりなく,チームによるシステム開発が一般的です.そこで,実データを対象に実世界のように複数人からなるグループでデータ処理やシステムを開発するスキルが必須となります.PBL演習では,新聞社から購入したデータや情報学研究データリポジトリ(IDR)を窓口として研究目的で提供されているデータの一部を教育目的で別途契約し,利用できる環境を整えています.現在,数年分の日本語の新聞記事,英語の新聞記事,子ども新聞のデータとクックパッドデータセットおよび株式会社Insight Techから提供されている不満調査データセットが利用可能です.これらのデータを自由に扱い,グループ内で議論して新たな課題を発見し,その課題に取り組んでいきます.



カリキュラムと修了要件

Kyutech ABCは知能情報工学科が母体となり,実施しています.対象は3年生で,4月に受講生を募集します.例年,多くの応募者がおり,抽選で36名程度が選ばれます.enPiT受講生はenPiTの修了要件として下記の座学による基礎知識学習(前期に実施),短期集中型PBL演習(夏休みに実施),発展学習(後期に実施)の3つに取り組みます.

基礎知識学習

前期の基礎知識学習では,座学として以下の2つの講義を履修します.
  1. 人工知能プログラミング:知的情報処理に関する技術を幅広く学んで, 人と計算機が協調する新しい知的情報処理のメカニズムの開発に従事する情報技術者のスキルを獲得することを目的とします.論理型プログラミングの基本概念を理解し,さまざまな情報システムを開発する能力を身につけます.
  2. ソフトウェア設計:主にUML(Unified Modeling Language)を用いたオブジェクト指向システム分析・設計手法について学びます.情報の収集と分析を通して解決すべき問題を整理し,その解決方法を見つけ出す能力を身につけることを目的としています.
※他学科,他大学の学生の場合は,その学科もしくは大学で実施されている関連する講義で振り替えることが可能な場合もあります.詳しくは担当者までご相談ください.

PBL基礎

夏休み期間(2週間程度)を利用して,集中的にPBL演習を行います*1.演習ではまずPythonをゼロから学習します.続いて,自然言語処理に関する基礎的な要素について学習し,機械学習ライブラリの使い方なども学習します.その後4名程度のグループに分かれ,実データを対象に何をするかをグループ内で話し合います.方針や実装方法を決め,プログラミングをし,短期集中PBLの最後に進捗報告としてグループごとに中間発表をし,教員やTA,他のグループから意見やコメントを貰います.
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*1: 令和3年度から夏休みではなく,後期に実施することになりました.



発展学習

夏期の短期集中型PBL演習終了後,グループごとに中間発表でのコメントなどを踏まえて改良を加えます.その結果を踏まえ,12月頃に最終報告会を実施します*2.他の地域のenPiT AiBiCの教員やデータ提供者なども最終報告会に加わることがあります.すべてのグループの発表が終了したら,全員で投票をし,優秀賞とプレゼンテーション賞を決め,クロージングで表彰します.
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*2: 前述のように令和3年度から後期(週1回3コマ)で実施しています.最初の2週がPBL基礎に相当し,残りが発展学習になります.8回目に中間報告会を,最終回(例年1月下旬)に最終報告会を実施しています.



これまでの活動実績

各年度で取り組んだ内容や表彰結果を以下に示します.取り組みに関する一部は enPiT news にも掲載されています[平成29年度修了生のインタビュー, vol. 15], [2018年夏:活動報告, vol. 16].
平成30年度から新たにデータを提供してくださったInsight Tech株式会社と共同でプレスリリースもしています.

令和3年度 / 2021年 (受講生:36名)

コロナ禍により,講義形式の内容や報告会はzoomを用い,班単位での演習ではgather.townとslackを用いて遠隔で演習を行いました.
  • 1班:Re:ゼロから始めるTwitter相性分析 ※プレゼンテーション賞
  • 2班:不満文生成Bot
  • 3班:SVMによる機械学習と新規データのカテゴリ分類
  • 4班:まだ気になるあの子と会話をするBot
  • 5班:レシピのレコメンド
  • 6班:JK共感Bot ※優秀賞
  • 7班:不満分析プロジェクト
  • 8班:新聞記事の自動生成
  • 9班:記事の煩雑化のための記事本文での順序推測

令和2年度 / 2020年 (受講生:37名)

コロナ禍により,Pythonの演習や報告会はzoomを用いた完全遠隔で行い,班単位のPBLについては,slackやdiscordなどを用いて対面と遠隔を組み合わせたハイブリッド形式で実施しました.
  • 1班:RNNを用いた新聞記事のトピック分類
  • 2班:一定期間内における新聞の人気ジャンルの推定とその要約
  • 3班:不満のカテゴリ再分類
  • 4班:SNSに眠る不満をリアルタイムで収集する ※プレゼンテーション賞
  • 5班:感情分析を用いた優先度の高い意見の抽出
  • 6班:COOKPADのレシピデータ分類/推定
  • 7班:難しい文章を子供でもわかりやすく
  • 8班:新聞記事を新聞社ごとに分類するシステム
  • 9班:未来予測 ※優秀賞

令和元年度 / 2019年 (受講生:39名)

  • 1班:新聞記事の簡略化
  • 2班:類似した対象への不満の推定
  • 3班:未来の新聞を作る!
  • 4班:新聞記事における効率的な文書分類手法の模索
  • 5班:クラスタリングによる難易度分類と検索システム ※優秀賞
  • 6班:レシピのコスト計算手法の提案
  • 7班:文章の難易度推定
  • 8班:文豪翻訳 ※プレゼンテーション賞
  • 9班:COOKPADレシピにおける難易度推定

平成30年度 / 2018年 (受講生:37名)

  • 1班:ユーザに楽しんでもらう共感サービス
  • 2班:不満データの分析手法の提案
  • 3班:不満の重要度による分類
  • 4班:レシピ分類器の構築 ※優秀賞
  • 5班:大学生のための簡単レシピ検索
  • 6班:不満度評価
  • 7班:類似度の高いレシピ工程の提案
  • 8班:自動タグ分類システムの構築
  • 9班:レシピ参考人数予測器の構築 ※プレゼンテーション賞

平成29年度 / 2017年 (受講生:36名)

  • 1班:レシピのアレンジ工程抽出方法の提案
  • 2班:140字レシピ要約とtwitter上での実装 ※優秀賞
  • 3班:Cookpadレシピのカテゴリ分類器の構築
  • 4班:料理分類器の構築 ※プレゼンテーション賞
  • 5班:料理の献立提案のアプリケーション開発
  • 6班:レシピから栄養素を出力するシステム
  • 7班:重要素材の抽出及び代替材料の提示
  • 8班:気分を考慮した書籍推薦システム
  • 9班:レシピのアレンジ工程抽出方法の提案


問い合わせ先

九工大のenPiTに関するお問い合わせは enpit-2[at]ai.kyutech.ac.jp まで.※[at]を@に置き換えてください.
他学科や他大学から受講を希望する場合もお気軽にお問い合わせください.後期開始前に併せてグループ分けを行うため,8月下旬までに連絡を一度いただけると助かります.

担当教員